● 主な詩集

2010 『フタを開ける』(書肆山田)

2010 『朝のはじまり』(BOOKLORE)

2012 『言の森』(BOOKLORE)

2014 『耳の人』(BOOKLORE)

2017 『光ったり眠ったりしているものたち』(BOOKLORE)

2018 『歩きながらはじまること』(七月堂)

2021 『ふたりはひとり』(七月堂) 

● 作品紹介  (3点)

 

言の葉 

 

         
大切な人が
言葉を拾っている姿を見かけたら
声をかけないでください
その人が
ペンを持ったまま
動かなくても
だいじょうぶ
その人が
黙り込んで
うつむいていても
だいじょうぶ
その人は
静かに
言葉を
集めています
その人は
素朴で
まっすぐな
言の葉を
探しています
時には
どうしても
大事な一枚が
見つからないこともあります
でも
だいじょうぶ
時間という

おだやかな風が
必ず
その一枚を
落としてくれるから
必要な言の葉を拾い集めたら
その人は
静かに微笑みます
そうしたら
声をかけてあげてください
きっと
喜びに満ちあふれた
その人の
口元から
あたらしい言の葉が
つぎつぎと
飛び出し
ひらひらと
空を舞うでしょう
その下で
毎日を過ごせたら
君たちは
だいじょうぶ

そぼく

 


いつからか
素朴に
暮らしていきたいと
思うようになりました

 

飾らず
あるがままを
大切にしたいと
思うようになりました

 

そうすると
 

雲を眺めるようになりました
 

猫がなつくようになりました
 

静けさを好むようになりました
 

鳥の声は森に響くことを知りました
 

けもの道が分かるようになりました
 

野草の名前を覚えるようになりました
 

朝の光は祝福であることを知りました

人から道を尋ねられるようになりました


月の満ち欠けを気にするようになりました
 

遅さの価値を知る人たちに出会いました
 

一日いちにちが違うことを知りました
 

ゆっくり生きていくようになりました
 

鹿の言葉が分かるようになりました
 

雨音が優しいことを知りました
 

損得では動かなくなりました
 

わたしはわたしになりました

優しさ


           
本当に強い人は優しい
幾多の困難に打ちのめされても
はい上がってきたから
苦しみや悲しみを心の底で
感じてきたから
自分が人に助けられてきたことを
知っているから

 

そして優しい人は弱い
すぐに
人を信じてしまうから
すぐに
心 傷ついてしまうから

 

でも弱い人は強い
その矛盾を
噛みしめて生きているから
その矛盾を
深い
優しさに代えていくから

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西尾勝彦 詩人・のほほん製作所